古渡り更紗
日本で「古渡り更紗」として珍重されてきた、更紗の紹介です。
古渡り更紗の多くは、インドで作られたものです。
この布の大きさが、インドネシアのサロン(腰衣)のサイズというところや、また、インドネシア
向けによく作られていた模様や構図という点から、インドで製作され、インドネシアに渡り、
それから日本に入って来たのではないかと考えられます。
インド更紗は、交易品として需要が高く、東西に運ばれたという背景が有り、ヨーロッパ向け、
タイ、インドネシアなど、輸出先の好みに応じて、製作されていたといわれています。
インド茜の色あせ具合が、とても魅力的です。
天然染料で染めた布が、年月を経ても美しいことを語ってくれる布です。
つくられた時代は特定できませんが、100年以上、もっと古い物かも知れません。
あまり良い状態とは言えませんが、こうして1枚の布のまま現存しているのは、
数少ないのではないでしょうか。こちらは、友人に譲り受け、資料として所有しているものです。
雑誌の撮影などでは、アイロンをかけて、しわを伸ばしますが、
余計な負担をかけたくないので、シワのついたまま写真を撮りました。
古い布が教えてくれる、天然染料の美しさや、仕事の細やかさを見るたびに、
これから先の100年後に「こんな技術があったんだ」と、思わせられるような布を、
作りたいと思い始めました。
<追記>この布は、日本のある家の蔵に眠っていたものです。
どのような経緯で、日本に入ってきたのかは定かでありません。