生命樹・2008 vol.2
10年ほど前に購入した、スマトラ島の南部ランプン地域に伝わる布「TAMPAN」は、
日本では霊船布として知られています。
太めの綿糸で、浮織りの技法で織られ、やや厚めに仕上がっています。
この文様にはいろいろな説がありますが、魔よけ、縁起物として、結婚式などのさまざまな祭礼の際に、
飾りに用いられるのが一般的なようです。
ランプンはインド洋に面し、マラッカ海峡に近いため、かつて交易で栄えていた時代がありました。
この布には、船上にそびえる樹木、その周りに多くの人々、獣、鳥などが描かれています。
船によって、多くのものが運び込まれ、地域を豊かにしたのでしょう。
この船布は、最近は見かけなくなったものの、わりと近年に作られており、特別に珍しいものでも、
技術的に優れたものでもありません。生命樹の構図のひとつではありますが、航海技術も満足ではない頃に、
海が道になっていたことを、思いめぐらせるのに楽しい1枚です。
日本にも、ペルシャの織物やインド更紗に由来するといわれる樹木文様が、正倉院に数多く遺されています。
樹木文様は、豊穣を表すものとして「生命の木」「生命樹」と言われ、現代の染織(特に呉服)にも、
数多く見ることができます。
文様のいわれやルーツは、歴史的な背景からもさまざまな意見があり、何が正しいのか判断しにくい
ところです。14世紀に書かれたポルトガル人トメ・ピレスの「スマ・オリエンタル」(東方諸国記)
によると、中継貿易港として栄えていたマラッカを訪れた際のことが、詳しく記されています。
読んでいると、海の道は日本にも続いていたと思われる部分がいくつもあり、
興味深い内容が記載されています。・・・詳しくは、またそのうち。
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